八咲コンサルティングの村上です。
前回の続きです。
BSを修正して経営状態を把握する方法をご紹介します。
BSの中で、特に注目すべきは純資産です。
純資産が大きいほど、経営状態は良好と言えますが、
問題は、決算書の数字は実態を表してはいないということです。
前回の2社も決算書では資産超過、中身は深刻な債務超過でした。
理由は、帳簿と実際の価値に乖離が生じるからです。
回収不能な売掛金の貸倒処理がされていない、
価値のない在庫が減額されず計上されている、
含み損益のある土地が取得価格のまま計上されている
潜在している退職給付債務が計上されていない等、
帳簿価額と実際の価値には乖離があります。
この乖離している項目を修正し
実態純資産を把握することで、
初めて正しく経営状態を把握することが可能になるのです。
実態貸借対照表作成にはすべての勘定科目の
詳細な調査が必要ですが、
主要な科目のみ修正したものでも十分経営の参考になります。
ポイントは会計監査で言うところの、
「資産は実在性と資産性、負債は網羅性をチェックせよ」です。
以下は代表的な修正項目です。
【資産の部】
売掛金・未収入金・貸付金等債権の回収不能額を減額、
償却資産の償却不足額を修正、
非事業用不動産・投資有価証券を時価に修正、
子会社株式や出資金を評価
【負債の部】
未計上の買掛金等の債務があれば計上、
退職給付債務を計算して計上
もし計算の結果実態債務超過だったとしても、
資金繰りが回っていればすぐに倒産することはありません。
が、負債が資産を上回る状態は健全とは言い難い状況です。
負債の部は、商事債務や金融債務など
期限があるものの比率が資産の部よりも高いため、
実態債務超過の状態では早晩資金繰りに窮する危険性があります。
実態純資産を回復させるには、
会社に利益を計上するしかなく、特効薬はありません。
しかし、実態の数字を掴んでおけば、
正しい危機感を持って経営に臨むことができます。
実態債務超過が判明したら、手遅れになる前に、
早めに収益の改善に着手することが大切だと考えます。